2019年9月30日月曜日

Wellingtonでの休日

Kia ora! Kaitoです。
早いものでもう10月ですね。この研修も残り2か月半と考えるとあっという間に終わるんだろうなと思ってしまいます。

さて、今回はWellington滞在時の休日に行った所等を紹介しようとおもいます。もうWellingtonを離れて3週間ほど経ってしまいましたが、、、、。 ずっと仕事が今までと比べ物にならない程忙しいので後回しにしすぎました、、。
ちなみに超個人的趣味ブログになると思うので注意(笑)

まず最初は、Southward Car Museumです。ここには到着後最初の週末に行きました。滅茶苦茶前ですね。。
博物館全景。
この博物館は故Len Southward氏が収集したプライベートコレクションを展示している世界規模(道中の看板でWorld classと自称していました(笑)。)の自動車博物館です。上記の写真でもわかる通り、200台以上の車やバイクを展示していました。
ここで印象に残った車両を紹介しようと思います。
かつてポルシェだったもの......
いきなり残骸です(笑)。
これは1996年に公道を用いたニュージーランド史上最高速チャレンジに挑んだポルシェ...の慣れの果てです。1度目のチャレンジで時速348km/hを記録し、更なる記録更新のために挑んだ2度目のチャレンジで右リヤタイヤがバースト、公道だったこともあり横転しながら大破してしまいました。幸いドライバーは大事には至りませんでしたが、この壊れ様を見ればどれだけ大きなアクシデントだったかが伝わってきます。
これはNZモータースポーツ史上においても重大なものだったようで、後世にも伝えるためチームがここに寄付したそうです。
事故前の姿。右下に事故時の写真もありますね、、、。
原因となったバーストしたタイヤもありました。ものの見事にトレッドが剥離してしまっていますね...。
300km/h以上でこうなってしまうともうどうしようもありません。
次は最初期の自動車、ベンツ・ヴェロです。
第1次大戦よりも40年近く前の車です。
これはメルセデス・ベンツ創設者の1人、カール・ベンツが生産した車両で、世界初の量産自動車と言われています。(1200台生産)
これで印象に残っているのは、現代の車との性能・構造の違いです。まずこの車両のエンジン、1000㏄単気筒とかなり小さなエンジンです。単気筒にしては大きい排気量ですが。
また出力も3馬力と、現代の車両と比べるとかなり非力ですね。しかもそのエンジンの構造も凄い物でした。
中心部にクランクシャフトが見えますね。
なんとオイルパン等が無く、クランクシャフトが野晒し状態なのです。摺動部への給油機構は備わっていますが、エンジン内部が厳密に密閉されている現代のエンジンと比べるととんでもないですね。屋外保存は厳禁でしょう。
エンジン横に油差しが備え付けてありました。
最後は50年代のF1マシン、マセラティ250Fです。
この個体、とんでもないです。
250FはマセラティのF1活動において最も活躍したマシンですが、この個体はそれだけではありません。F1現役時代はファン・マヌエル・ファンジオやマイク・ホーソーンという伝説のドライバーがドライブし勝利を重ね、その後売りに出され後にF1チャンピオンとなるジャック・ブラバムやルマンウィナー、クリス・エイモンが所有し彼らの若手時代を支えた、という経歴の持ち主でした。この1台に色んな歴史が詰まりすぎですね。

この他にも様々な車両が展示されていましたが、ここでは書ききれないので実際に訪れて見てください(笑)。

このフェラーリ・750モンツァ、NZでのレースで1人事故死している曰くつきな上、その後修復されレースで使用された挙句、一時期コルベットのV8エンジンをぶちこまれていたようです。(オリジナルは直4)
今はオリジナルに戻されています。

何か変な車も居ました。
次はニュージーランド国立博物館、Te Papa Tongarewaです。
かなり大きな博物館です。
ここは1988年に国が作った貴重な資料等の保存を目的とした博物館で、ウェリントン市街中心部の海沿いにあります。ちなみに入場料は無料!
ニュージーランドの歴史や自然に関する展示から近代芸術まで、幅広い展示がされています。
ダイオウイカの標本が展示されていました。信じられないくらいデカいです、、。

第一次世界大戦の企画展をやっていました。
これは言わば巨大スケールなのですが、髪や肌の質感がすごくリアルで凄かったです。
ここで僕にとって予想外過ぎた遭遇がありました。とあるバイクが展示されていたのですが.....。
凄い展示方法ですが、見つけた時腰が抜けそうになりました。
Britten V1000です!! 少しコアな車両かもしれませんが、世界的には有名なマシンです。
何故有名なのか?それは開発された経緯、構造と戦績を見れば一目瞭然だと思います。
まずこの車両、メーカー製作ではなく、あるJohn Britten氏という男が一人で設計、大半のパーツ(タイヤやサスペンション、ギヤボックス等以外全部!)を手づくりした車両なのです。
構造もかなり面白いです。本来、バイク(特にレーシングバイク)のフロントサスペンションはテレスコピック式、特に倒立タイプが大半ですが、

参考:RC213V '18
このタイプのサスペンションがテレスコピック式倒立タイプ。
Brittenはダブルウィッシュボーン式ガーダーフォークとなっています。
写っていませんがトップブリッジ下辺りにショックユニットが取り付けられています。
こうすることでブレーキ時にノーズダイブ(車体が前傾になる)しにくい他、路面追従性が高くなる等の利点があるようです。
また、リヤサスも特殊です。スイングアーム式である事は同じなのですが、ショックユニットの位置がシート下ではなくエンジンの前にあるのです。
フロントタイヤ後ろ、エンジンの前にユニットがあります。
作動方法はスイングアーム下端からエンジンの下部を長いロッドが通してあり、スイングアームが沈むとロッドが引っ張られ、リンクを介してスプリングを下向きに押す、といった方式です。利点は路面状態がライダーに伝わりやすいのだそうです。
固定具で隠れてますがオイルパンの下をロッドが通っていますね。

カーボンスイングアーム。ちなみにこれも手作り。
複雑なエキゾーストマニホールド。これもエンジンも全て手作り!!
と、構造的にも特徴的で個性の塊みたいなバイクですが、ただのイロモノではありませんでした。デイトナ等で開催されていたBOTT(Battle Of The Twins)に参戦していましたが、ドゥカティ等のワークスマシンを打ち破って数多くの勝利を重ねたのです。オーソドックスからかけ離れたマシンであっても勝つことが出来たのは凄まじい事だと思います。
残念ながらJohn Britten氏が開発した数年後に癌で亡くなってしまった為計画は長く続きませんでしたが、ニュージーランド発のバイクが世界で活躍した事はこの国にとっても偉大な事だったんだなと思いました。

もちろん、この他にも様々な展示物があるので、1度訪れてみてはいかがでしょうか。

他にもウェリントンではMt.Victoriaや動物園などに行きました。
ウェリントン市街が一望できます。
ウェリントンはオークランドに比べてかなり小ぢんまりとした印象を受け、街を少し抜ければすぐ田舎、というような街でした。少なくとも首都っぽさはあまり無かったですね。
ですがとてもいい街でいい時間を過ごす事が出来ました。もし、ニュージーランドに来る事があれば上記の場所を含めて訪れてみる事をお勧めします。

と、今回はプライベート編でした。写真多めの趣味ブログみたいになってしまいましたね(笑)。またオークランドに戻ってからの話も近いうちに書きます。
では!

2019年9月11日水曜日

Wellingtonでの仕事

Kia Ora! どうもKaitoです。もう9月ですね。結構仕事が忙しかった為、時が過ぎるのがあっという間過ぎて驚きさえ覚えます。

さて、前回プライベート編を書くと言いましたが、忙しくしている内に1ヶ月経ってしまったので、Wellington編で区切って後日書こうと思います。
なので今回はWellingtonでの研修後半について書いていきます。



まず1つ目は、BMWの整備です。


僕たちがいるのはホンダディーラーですが、たまに他社の車両の仕事が入ってくる事があります。Shunもヒュンダイが来たと言ってましたね。
この時、僕が作業したのはワークメイトが乗っているBMWでした。中古で買ったらしく、整備もちゃんとされていなかったため、パーツ類を自分で揃えて工場に持ち込む形でした。
日本語表記を見つけました。ということはこれも日本からやってきた中古車という事ですね。
日本車以外も日本から持ってくるんですね。
…なんでマツダのクーラントなんでしょうか?

クーラント、ミッションオイル等を交換しましたが、僕が担当したのはスパークプラグ、ヘッドカバーガスケット、オイルフィルター、フューエルフィルターでした。
初めて搭載状態の直6エンジンの部品取り外しを行いましたが、直6特有のエンジン全長が長いためバルクヘッド方向、シリンダ番号5番、6番辺りになってくると体勢がきつくなってきたり、工具が入りにくくなってくるようになり少し辛かったです。直6エンジンは全長が長い分、横置きがしにくいため基本縦置きでマウントされますが、こういった難所?も出てくる訳です。

手前側から1番シリンダ、1番奥が6番シリンダ。
ホンダは直6エンジンを作っていないため貴重な経験となりました。
また、年式によって違うのかもしれませんが、フューエルフィルターの形式の違いも気になりました。ホンダのフューエルフィルターはフューエルポンプと一体型で燃料タンク上部に取り付けられていますが、このBMWの場合は車両下部、フューエルラインの途中にフィルターのみ組付けられる形式となっていました。
この缶みたいなのがフィルターです。
個人的にはこの形式の方が交換しやすくて良いと思いました。ホンダ車の場合、だいたい
はリヤシートを外して蓋取って…など行程が多いのですが、これはホイストで車を上げて銀色のホルダーを緩めれば取れますからね。ただ、これだけ小さいとフィルターとしての性能は頭打ちでしょうし、ホンダのように他の機構と一体にもできないので、性能的には良いとは言えないかもしれません。


次にS2000のクラッチ交換です。
いいデザインしてますよね...。
こう見るとエンジンがかなり後ろ、フロントミッド気味に搭載されているんですね。
マニュアル車はエンジンからの動力をトランスミッションに伝えるため、摩擦材(クラッチフェーシング)を貼り付けたクラッチディスクを用います。動力の断続はダイヤフラムスプリングを用い、クラッチペダルを踏むとスプリングが押し上げられ、クラッチがフライホイールから外れる仕組みとなっています。また、坂道発進や渋滞時等に「半クラッチ」と呼ばれる状態にして発進することも少なくありません。この半クラッチはクラッチを完全に切るのでは無く、少しだけ浮かせることでクラッチディスクを滑らせ、低い回転数のまま発進する事が出来ます。
このように常にフライホイールに張り付いている訳ではなく、時には擦れあったりする為、クラッチフェーシングは摩耗していきます。半クラの頻度が高ければ高いほど摩耗も早まります。また摩耗が進むと動力伝達が上手くできなくなり、回転数は高いのに速度が上がらないという状態にもなります。その為、定期的にクラッチを交換する必要があるのです。

取り外したギアボックスとプロペラシャフト。
まずはカプラー等を取り外し、ギアボックスを取り外します。その際、取り付けの事も考えてプロペラシャフトも取り外します。
中心部の切り欠きが入ったような板がダイヤフラムスプリングです。
するとクラッチ一式が姿を現しますクラッチカバーがフライホイールにボルト留めされているため、それらを緩めてアセンブリで取り外します。
取り外したクラッチ一式。
交換もアセンブリのまま行うので、クラッチディスクだけを取り外したり分解する必要はありません。
また、フライホイールも取り外し接触面を研磨します。理由としてはブレーキディスクと同じく接触面が不均等になる為だと思われます。
研磨した後のフライホイール。
フライホイールが研磨から帰ってきたら(Honda Cars Wellingtonではブレーキディスク、フライホイールの研磨を外部に任せています。)組付けて完了です。

お次は前回も書いたオートマチックトランスミッションの不具合です。
あのブログを書いた数日後、再び不具合(1速に入らなくなる)が発生し、ワークショップに帰ってきました。
再び原因を探り、電気系統やライン圧を調べましたが、相変わらず不具合は見当たりません。となってくると、前回分解しなかったギヤシャフト、クラッチに不具合がある事になります。
ATミッションの変速制御にはサンギヤ、プラネタリピニオン・プラネタリキャリア、インターナルギヤで構成されるプラネタリギヤを用いており、この3要素のうち一つを入力、余った2つのうちどちらかを固定、または出力にすることで動力を伝達します。
プラネタリギヤの図解。
出典:https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0907/24/news115_2.html
自動車においては固定を行うものとしてワンウェイクラッチを用いています。エンジンの正回転の方向に回転するとインターナルギヤ等を固定し、その逆になると固定が外れフリーになります。

ワンウェイクラッチ。
一方向のみ動力を伝えられる構造としては、上記の写真のタイプだと楕円形のローラーが組み込まれており、固定方向に回転するとローラーが起き上がり、引っかかって固定の働きをします。逆方向になるとそれが外れてフリーになるという事です。
これが原因ではないかと考え、1速のワンウェイクラッチを取り外して確認した所、固定方向に指で強く力を入れるとクラッチごと回転してしまう事が確認できました。これではベアリングみたいなもんですね。この状態では3要素に必要な固定がされず、フリーな状態のままになってしまう為動力が伝達されないのでした。
ただ、これは組み込み状態では確認できませんでした。おそらく、組付けた状態だとトルクが掛かったりする関係で人の力では動かなかったのでしょう。しかし、走行時は更に大きな力が掛かりますから、空転してしまうということだと思われます。
新品のクラッチを取り付けた所、不具合は消えたため再びお客様へとお返しする事が出来ました。


最後はピストン交換です。
前回、ミスファイア解消のためシリンダヘッドを取り外した事を書きましたが、あのエンジンにはもう一つの問題がありました。それはオイルの消費が早いというもの。消費が早いという事は何処かから漏れているか、燃焼室で燃えてしまっているかの何方かです。漏れた形跡は無く、またヘッドからのオイル下がりの形跡もない為、ピストンを取り外して確認することにしました。すると…
3本あるリングの1番下がオイルリングです。
オイルリングの隙間にカーボンがびっしりと詰まっていました。オイルリングはシリンダに残った余分なオイルをかき落とす役割を持ちますが、ここまで詰まってしまうと張力を失い、オイルをかき落とす性能も無くなってしまっています。これがオイル上がりです。
ピストン全域にもカーボンがかなり堆積していた為、新品のピストンを入れる事になりました。

さて、新品のピストンが届き、組み込もうと中に入っていた説明書を見たのですが…

.......?
これ、意味分かりますか??文章が一切なく、イラストでの説明のみ。
どうやら「新品ピストンは品番が違う(古いのがRBJ‐1、新しいのがRBJ)けどそれを使ってね」という説明のようなんですが、理解するのに数分かかりました…。
左がRBJ、右がRBJ‐1.
オイルリング溝の幅が違いますね。


さて、こんな感じで振り返ってきましたが、Wellingtonでの勤務は先週金曜をもって終了しました。Northshoreとは打って変わって重整備が多く大変ではありましたが、エンジンほぼ全分解やATミッションOHなど貴重な経験をさせて頂きました。特にエンジン分解はそう頻繁にあるものでは無いそうです。これらの経験を今後に生かせるようにしていきたいです。
そして、昨日より最後のブランチであるEast Aucklandでの勤務を開始しました。2日働いてみての印象は....今までで一番忙しくなりそうです、、、。

では、今回はこの編で。最後まで読んでいただきありがとうございました!!

Time has come

Kia ora!! Kaitoです。 とうとうこの日を迎えてしまいました。12月10日、本日最終プレゼンを終え、無事に研修の全行程を終了しました。全て英語で行うプレゼンテーションを行いましたが、事前に最低10分、最大30分と言われていたにも関わらず、今までやってきたこと、経験し...